Contents
ダイエットは食習慣だけを変えることじゃない
ダイエットというと普通は食習慣だけを変えることだと思いがちです。
これは自然な発想ですが、残念ながらこの方法だと一時的にダイエットに成功したとしても結局リバウンドしてしまうことが多いのです。
食習慣というのは数ある生活習慣の中の大きな部分を占めることはまちがいありません。しかしあくまでもその中の一習慣にすぎません。
ほかの生活習慣も一緒に改善されないと、せっかく改善した食習慣もダイエットが終われば元に戻ってしまうのです。
痩せられない人の特徴

これは「月曜断食」を提唱されている鍼灸師の関口賢さんがおっしゃっている(何度やってもダイエットに失敗する人の五つの特徴)のですが、多くの人を診てきた中でなかなか痩せられない人の特徴というものがあるそうです。
それは、
・部屋が片付けられない
・時間にルーズ(忙しいを言い訳にする)
・運動で痩せようとする
・自分をほめられない人
・「楽なダイエット」に少しずつ取り組もうとする人
これらの項目を見てギクッとした人もいるかもしれません。
いやダイエットに悩まれている人の多くが、なにがしかの項目にあてはまってるのではないでしょうか。自分はすべてあてはまっていたので(笑)、恥ずかしいというより笑ってしまいました。
おもしろいのは5番目をのぞいて直接食習慣と関係しているわけではないということです。食習慣以外の多岐にわたる生活習慣について指摘されていますね。
でも少し深く考えると食習慣とも共通する考え方が太っている人にはあるのです。
例えば部屋を片付けられない人というのは自分に必要なものの優先順位がつけられない人ということになります。
自分に必要なものの優先順位がつけられていれば、必要ないものは捨ててしまうとか整理して戸棚にしまうとかの行動になりますが、それがわかっていないので片付けられないのです。
これを食習慣に置き換えて考えてみますと、自分に必要な栄養素やカロリー量がわかっていないということになります。そのためドカ食いをしたり、栄養配分を考えないで自分の欲しいものを欲しい分だけ食べてしまうわけです。
時間にルーズな人はそもそも他人との約束が守れないわけですから、自分との約束なんて守れるわけないですよね。ダイエットというのは程度の差はあれ、自分が決めたルールを守っていく工程なわけですから、ダイエットができないのは当然のことになります。
言い訳が多い人というのは、ダイエットに必要なルールから外れて例外をたくさん作ってもしまう人なわけですから、これも続かないのは当然のことになりますね。
運動については関口さんは、運動はそもそも体形や体重の維持に向いているもので、減量目的でやるのはトレーナーをつけて相当ストイックにやらない限り無理だといいます。
自分をほめられない人というのは女性に多いそうです。自分をほめられないとルールを守れなかったときに必要以上に自分を責めてしまい、自信を失ってあきらめてしまいがちです。
この自己承認力というのは後に述べるようにダイエットではクリティカルに効いてくる要素なのです。
ところで関口さんのいう痩せられない人の特徴を逆にして実行すれば、痩せられる人の特徴になりますよね。つまり、
・部屋が片付いている
・時間に几帳面(言い訳をしない)
・運動で痩せようとしない
・自分に自信がある
・ダイエットをするからには徹底的にやる
それじゃあ上のような特徴をそのまま真似てしまえば、もしかしたらダイエットもうまくいくのではないかなと思われた人もいるんじゃないでしょうか。
実際その通りにされてダイエットに成功された方がいます。
美人の行動様式をまるまるコピーするダイエット法

多分だれしも一度は痩せている人やスリム美人さんの行動様式を習ってみようとしたことがあると思います。
ただそれは思いつき程度でそれも部分的にしかしようとはしないものです。スリム美人さんの行動様式をまるまるコピーしようとまで思って実行する人は少ないと思います。
その数少ない実行者がわたなべぽんさんで、自分のダイエット体験を「スリム美人の生活習慣を真似したら1年間で30キロ痩せました」など、数々の著作にしていずれもベストセラーになっています。
ぽんさんのダイエット遍歴は自分とよく似ていて、リンゴダイエットなど数々のダイエット法を試し一時的に減量できても、その都度リバウンドして、年齢とともに体重が上がっていくというスパイラルに陥っていました。
体重はMAXで95キロになったといいますから、身長165cmの女性としては相当なものですね。ある日トイレに行って便座に座ると体の重みで便座が割れてしまって、ショックを受けたところからダイエットは始まります(笑)。
ぽんさんはまずダイエッターが書き込むあるポータルサイトをのぞいてみて、ほかの人がどういう考えや方法でダイエットをしているのかをチェックしてみたそうです。
そこで気がついたことは太っている人はなんやかんやと言い訳が多くて全体的に太ってしまうような生活を、美人さんは美人らしい生活をしているということでした。
おデブさんはおデブさんらしい生活、スリム美人はスリム美人らしい”キラキラ”している生活をしていたのです。
その後はリアルの世界でもスリム美人の行動様式を逐一観察していきます。
スリム美人さんは例えばオフィスのデスク周りがいつもきれいだとか、必ずパジャマに着替えて就寝するとか、靴の手入れがされているとか、こまめに美容院に通っているだとかです。
ほかにもたくさんありますが、詳しくは本書を読んでいただくとして、ここでわかったことはスリム美人さんは何か特定の生活習慣が”キラキラ”しているのではなくて、ジャンル問わず生活全般にわたってまんべんなくどこかキラキラしているということです。
スリムだからといって食生活だけがキラキラしていたり、運動習慣として特別スポーツを好んでやっていたりとかではなく、まんべんなくほどほどに無理をしないで生活を送っているということです。
ぽんさんはそこで自分なりの理想とするスリム美人の”ペルソナ”を考えました。ペルソナというのは仮の人物像、モデルのことです。
ぽんさんはあこがれのスリム美人さんだったらこういう生活を送っているのだろうなと勝手に想像することで、自分なりのスリム美人のペルソナを固めていったのです。
スリム美人だったらこういう髪型をしていて、服装はこんなかんじで、運動はどんなことをやっていて、どういう友達付き合いをしているのかなとか自分だけのペルソナを作り上げる。そしてその人になったつもりで生活してみる。
これがぽんさんのスリム美人になったつもりのペルソナダイエットです。
バフェットは人生のペルソナを重視する
実はバフェットも人生のモデル選択の重要性を説いています。
The best thing I did was to choose the right heroes.
生涯で最善の方法だったのは、的確に人生の師を選んできたことだと。
バフェットには投資の師匠以上とも呼べる人物がいます。それがベンジャミン・グレアムという投資家です。
バフェットはグレアムを崇拝するあまり、子供の名前にもグレアムとつけているほどです。
このグレアムさんは投資の世界ではバリュー投資の父といわれています。バリュー投資とは企業価値が割安になっている株を買って長期に保有し利益を出すというバフェットの投資哲学と通底する投資法のことです。
グレアムの著書は日本でも「賢明なる投資家(The Intelligent Investor)」というタイトルで売られています。
バフェットは投資する会社の経営者の能力と人柄を重視します。尊敬できる経営者じゃないとその会社には投資しないのです。
バフェットの投資法は、単に株式を買うのではなく会社の経営権を所有する、そしてその会社のトップの才能と人柄を買うということなのです。
またバフェットは就職活動をする学生に向けて、尊敬する人の下で働きなさいとアドバイスしています。
バフェット自身、ビジネススクールを卒業後にグレアムの下で無給でもいいから働きたいといったぐらいなので、これは本心からの忠告なのでしょう。
またバフェットはこうも言っています。
It’s better to hang out with people better than you. Pick out associates whose behavior is better than yours and you’ll drift in that direction.
あなたより優れた人と付き合うようにしなさい。善い行いをしている人と知り合いになりその人に導いてもらいなさい。
ここではこう言い換えましょう。良い習慣を身に着け、良い習慣に導いてもらいなさいと。
生活習慣は相互に連動している

関口先生の痩せられない人の特徴と、ぽんさんのなりきりダイエットはいろいろなことを示唆してくれています。
一番のポイントは、太っている人の生活習慣は全体的に太ってしまうような習慣体系に、痩せている人は全体的にやせてしまうような習慣体系になっているということです。
多少の濃淡はあれど、太っている人の習慣は体系としてみるとやはり太ってしまうような習慣の束で構成されていて、痩せている人のそれはやせるような習慣の束で構成されているということです。
このことが意味しているのは、習慣同士というものは連携、連動して相互に影響を与えているということです。
例えば姿勢が悪くて背中が曲がっているのが習慣化している人は、血流が悪くなったり体の節々が痛み出したりしてあまり動かなくなります。
動かなくなると代謝が落ちてますます太りやすくなります。人間動かなくなると逆にストレスを感じて食欲がわいてくることがありますので、食べてしまって太ってしまうわけです。
身体習慣と食習慣は相互に影響しあっていて、どちらかが悪くなると片一方にも伝染して両方とも悪くなってしまうという傾向にあります。
そして姿勢が悪いと太りやすくなり、太るとますます姿勢が悪くなるという相乗的な影響が出てきます。そして太ると動きたくないので部屋の片づけや掃除も後回しになったり、頻度も落ちてきて最終的に太るとともに部屋も汚くなってしまうのです。
このように身体習慣と食習慣、そして掃除習慣が連動してくることがわかります。
それぞれが独立していて、ある習慣がほかの習慣に全く影響を与えないということは起こりえないのです。
ダイエットを決意してから最初に買ったのはコードレス掃除機

さあダイエットを始めよう!と思って、まず最初に買ったのはコードレス掃除機でした。
コード付きの掃除機は重くてコードが絡まる上に、押し入れから仕事部屋まで距離があり、だしてくるのが億劫なのでどうしても掃除する頻度が下がりがちでした。
部屋が汚いと気分もどよーんとしてきますし、そういう部屋だと次第に座り姿勢も丸まってあごが出て猫背になりがちになります。
そうなると肩や腰に負担が来ますし、血流やリンパの流れも悪くなってなんだか体がだるく重くなっていきます。気分ものらないのでイライラして集中力が落ちますし、そうなると自然と作業の生産性も落ちてしまうわけです。
なので充電式のコードレス掃除機を買って部屋の隅に置くことで、常時掃除したいときにはすぐ掃除できるようにしたのです。
その効果はテキメンで、ちょっと席を離れて戻ってきたときにサッと掃除機をかけることができるようになりました。それも別に部屋全面ではなくて、少しここ汚れてるなとか思えば部分的に掃除できるので掃除の効率が上がります。
少し掃除機をかけてあげるだけで気分転換になりますし、体も動かせるのでちょっとしたストレッチにもなるので、やはり部屋用にコードレスを購入したのは良い選択をしたのだと思います
自分の部屋がきれいになると自然と他の部屋も掃除したくなりますし、そうなると今度はコード付き掃除機をひっぱりだして本格的に掃除しはじめるようにもなりました。
その時は掃除機とダイエットに何の因果関係があるのかは自分でもよくわかっていませんでしたが、後から振り返るとやはり大きな効果があったと思います。
それは今までの自堕落な自分と生活からおさらばして、新しい自分になるという暗示としての掃除機購入だったのだと思います。
習慣ファースト、減量ラストの考え方

人は毎日意志の力で判断して行動していると思いがちですが、生活の多くの部分を一一意識することなくいつもの習慣のまま行動しています。
デューク大学の学者が2006年に発表した論文によると、毎日の行動の実に5割近くがその場での意思による決定ではなく、習慣によって駆動されているという話があります。
この無意識で行っている多くの習慣行動を良い方向に改善できれば、努力することなく身体を変えていけるはずです。
ダイエットを始めるとどうしても体重を減らすことばかりに注意がいってしまいますが、大切なのは体重を減らす努力ではなく、体重が減っていくような習慣を身に着ける努力をすることなのです。
上述のスリム美人になったつもりダイエットを敢行したぽんさんも、スリム美人の生活習慣を丸々コピーして身に着けたからこそ、結果的にやせていったのです。
もっといえば、スリム美人がつけている習慣体系の背後にある考え方を理解したからこそ、自分の習慣体系を全面的に見直して変えていくことができたのです。
ポイントは習慣形成が先で減量はその結果だということです。
そしてその習慣形成も単体ではなくて体系としての形成だということです。
減量が先に来るとなぜ苦しいのかといえば、既存の他の生活習慣が太るための仕様のままなのに、食習慣や運動習慣だけ部分的に痩せる習慣へと変えようとしているからです。
太ってしまう習慣体系のままで一部の食習慣だけに減量の負荷がかかってくるので、必然その減量習慣は過酷なものになってしまいます。これではその習慣は長続きしませんね。
なのでこのやり方だとよくありがちな減量ファースト、リバウンドラストになってしまいます。
バフェットはルーティンの達人
バフェットさんは習慣もしくはルーティンの達人といってもいい人です。
アメリカの片田舎に住んでいて都会に出てこないのも日々の生活スタイルを乱したくないという考えからですし、食生活がチェリーコークとハンバーガー一辺倒なのも固定されたルーティンの一環なのです。
1958年に3万 1500ドルで購入した自宅を大金持ちになって現在に至るまで修繕しながら住み続けています。
一日の活動量の8割は企業情報などを読むこむことにあてられ、その時間中は来客もシャットアウトしてひたすら集中して読み込むのです。脳をフル回転させるのでそのエネルギー源として大量のチェリーコークが必要なのでしょう。
上の言葉もそうですが、バフェットさんは習慣についていくつかおもしろい話をしています。
Chains of habit are too light to be felt until they are too heavy to be broken.
習慣というものは普段は意識しないぐらい軽いものだが、本当は分ち難く重いものだ。
習慣の存在を過小評価してはいけないということです。
注目は”Chains of habit”です。習慣の連鎖という意味ですが、バフェット自身が習慣というものを単独では考えておらず、束のようなものだと考えていることがわかります。習慣とは常に複数形なのです。
経営学にはサプライチェーンとかバリューチェーンだとかいう言葉がありますが、習慣にもチェーンがあり、ここではそれを”ハビットチェーン”と呼ぶことにします。
次回はより詳しくこのハビットチェーンについて紹介したいと思います。
・習慣は思ってる以上に人生に影響してくる
・習慣とは単独で存在しているのではなく相互に連携連動している複数形である
・習慣の束、ハビットチェーンを考える
・良い習慣を身に着け、良い習慣に導かれよう
・食習慣だけを変えてもダイエットは成功しない