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『イラストでときめく片づけの魔法』 近藤麻理恵著 サンマーク出版
近藤麻理恵さんというと、おそらく特に女性で掃除や整理整頓に関心のある方で知らない人はいないというほど、片付けに関する本でベストセラーを連発されている方です。
”こんまり”という愛称でも知られています。なのでここではこんまりさんと呼ばせていただきます。
こんまりさんは何冊もの片づけの本を書かれているのですが、その中でも今回は『イラストでときめく片づけの魔法』を取り上げたいと思います。
この本はこんまりさんのファンの方から、現場で指導されてるときのような具体的なレッスンがつまったイラスト集がありませんかという要望に答えて書かれた本です。
そのため神は細部にやどるといいますか、具体的なノウハウのなかにもこんまりさんの「ときめく」思想がたっぷりとつまったエッセイになっています。
ただしこの本は確かにほんわかとした片づけのエッセイでもありますが、同時にこんまりさんはこの本の最初で一生に一度の「片づけ祭り」に参加する覚悟はありますかと読者に問いかけます。
根本的に片付けられる人になるためには、多少のショック療法といいますか、荒療治が必要だと考えているからです。
片付けはノウハウじゃなく心持
こんまりさんは読者に具体的なノウハウ本の出版を求められてこう答えます。
そんなの、必要ないですよ。片づけはマインドが九割ですから。
こんまりさんが片付けコンサルタントとして目標としてきたことは、たんなる片付けるための方法を教えるのではなく、根本的に片付けられる人にすることだからです。
とはいえこの本はそのような心持になったうえで、事細かにかゆいところまで手が届くような個別具体的な片づけ術を公開してくれています。
具体的なノウハウを知ることで、スムーズに片付け作業ができれば、根本的に片付けられる人に近づくからです。
こんまりさんが言いたいことは、例えノウハウを習得しても心根が伴っていなければリバウンドしてしまうということが言いたいのです。
こんまりメソッドにリバウンドがない理由
こんまりメソッドには汚部屋にはもどらない、つまりリバウンドがないといいます。
それにはこんまりさんの考え方があります。
片づけの成功のコツは、「一気に短期に完璧に片づけを終わらせる」ことです。
一旦完璧に片付けてしまうと、二度ともとの散らかった状態に戻りたくないという心理が働きますので、ちょっと散らかったしてもその都度片付けることでいつも片付いている状態にしておけるということです。
なのでこの本で描かれている方法は、すこしずつちょっとずつ進めるものではなく、一気に短期に完璧に片付けるための人生で一度だけのハードな片づけ方なのです。
こんまりさんのいう「ときめき」という名のイノベーション
こんまりさんの本には必ず「ときめく」という形容詞がついてきます。
ときめく玄関、ときめく寝室、ときめくバスルーム。
普通は片付けられた部屋の形容詞は「きれいに」とか「整理整頓された」などを使いますが、彼女は「ときめく」という形容詞を使うのです。
この”ときめく”というフレーズが彼女を片づけ界?のスターにしたのだと思います。
どういうことかといいますと、きれいにとか整頓されたというのは客観的な評価です。これに対してときめくというのはまさに自分の内心からわきあがるものです。
つまりとても主観的なのです。
じぶんがときめくかときめかないかが部屋のきれいさの評価の基準になるのです。
他人に見せるための表面的なきれいさではなく、自分の内心からときめくための片づけでなくてはなりません。
そしてときめくというのは部屋の枠内にとどまりません。
これからあなたがはじめる片づけは、たんに「お部屋をスッキリ」させたり、「人が来た時だけ、とりあえずきれに見せる」だけのための片づけではありません。あなたの人生を変える、「人生をときめかせる」ための片づけなのです。
こんまりさんの片づけの最終目標は人生をときめかせることにあります。
わたなべぽんさんのペルソナダイエットと共通する思想
バフェットダイエットでも紹介したのですがスリム美人の真似をすると痩せる理由、こんまりさんのときめく片づけ方の哲学は、わたなべぽんさんのペルソナダイエットの考え方と共通するものがあります。
ペルソナダイエットとは自分が勝手に名付けたものですが、簡単に言えば、自分のなりたいスリム美人のペルソナ(理想像)を設定して、そのペルソナがするであろう行動様式や毎日の習慣を想像してその人になり切ったつもりで生活をするというダイエット法です。
つまりこんまりさんと同様に、まずなりたい自分をペルソナとして設定してそこから逆算して行動様式を決めていくダイエット法です。
この方法はダイエットの細々としたノウハウを実践するというよりは、今までとは別人のような心持になるということですから、こんまりさんのいう一気に短期に完璧に部屋を片付けてしまうという思想と通底しているのです。
こんまりさんがときめきを基準にするように、ぽんさんはキラキラを基準に行動様式を決めていきます。
この点もお二人とも共通しているのですね。
理想の暮らしをイメージして片づけを始める
こんまりさんはいきなり部屋の片づけに入る前に考えてほしいことがあるといいます。
それは、「どんなおうちで、どんな暮らしをしたいのか、理想の暮らしを考える」ということです。
表面的な通り一遍のきれいさではなく、自分が心の底からこの部屋に住みたいと思えるようなときめく部屋にしていく。
たとえば、ときめく寝室についてこんまりさんはこんなイメージを提供します。
寝室が一日の疲れを癒す、エネルギーの充電基地となりますように。
寝室を「エネルギーの充電基地」とイメージする人はなかなかいません笑。本当に素敵な表現だと思います。
まず自分がどんなおうちに暮らすことが理想なのかをまずイメージをして、そこから逆算してそのためにはどのような作業が必要になってくるのかを考えるということが大事だといいます。
なにをどう片付けるかは自分がときめいた部屋のイメージから決まってくるのであって、どの部屋でも同じような手順ややり方で決まってくるわけではないからです。
このような考え方は、先ほど紹介したペルソナダイエットのわたなべぽんさんも使われていた手法ですね。
また日本を代表するような和食料理店の主人も同様のことを言われています。
先日、ミシュランの最新刊が出版されましたが、そこで大阪では数少ない三星店になったのが柏屋の松尾英明さんです。
松尾さんはたねや主人がつくった滋賀随一の観光地『ラコリーナ近江八幡』でも言及した老舗料亭招福楼で修業された方です。
こちらのFoodionというサイトのインタビューにおいて話されている内容が興味深いので引用します。
目標が見えないまま闇雲に試すのはありえない、ということです。(略)
ほわぁっと湯気が立って、鶏もぷりっとして、卵も半熟のところがあって…その完成形を明確にイメージできていたら、そこに至るまでの、鶏の包丁の入れ方や卵を入れるタイミングを綿密に計画できる。料理に限らずどんな物事もそうです。
最終的な終着点をどれだけイメージできるか。そこが到達できる最高地点ですよね。
自分は結構色んな分野の本を読んできましたが、その業界の第一人者さんというのは不思議なことに分野がちがっても同じことを述べられているように思います。
何かの道を究めるというのはどの分野でも通用するようなやはり王道というものがあるのではないでしょうか。
まずは「捨てる」を終わらせる
こんまりさんの取捨選別の基準は先ほど述べましたようにここでも”ときめく”かどうかです。
捨てるモノと残すモノを見極める基準は「ときめくかどうか」です。
その際必ずモノに触ってみることが必要だといいます。
モノに直接触れて、モノと対話してあげて、その結果ときめくかどうか。
捨てるモノを決めるのではなく、ときめくモノを決めるという考え方です。
こんまりさんがおもしろいのは、捨てるのが大事ということは変わりないのですが、捨てることを一回で終わらせましょうと言い切ってることです。
片づけ成功の鉄則は、まずは「捨てる」を終わらせること。
捨てるという行為は一回でおしまい、なぜなら大事なことはときめくモノだけを身の周りに残して満ち足りた生活空間をつくることだからです。
自分もダイエットを始めるときにまずやったのは今まで使い慣れた、太った自分に適合していた椅子やマットレスを一式合切未練なく捨てることでした。
これについては強固なハビットチェーンを築く12の方法に書いています。
この本は井上まさこさんのイラストもほんわかとしてかわいいですし、モノの見方生活の仕方考え方についてのこんまり節満載のエッセイでもあると思います。
こんまりさん自身が話してることですが、一生に一度の片づけ祭りをやり抜く決意がまだない方は、「人生がときめく片づけの魔法」のほうを最初に読んでほしいとのことです。