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『いいことがいっぱい起こる歩き方』デューク更家著 幻冬舎文庫
デュ-ク更家さんというと、独特なウォーキング方法で一世を風靡した陽気なおじさんといったイメージを持たれている人もいると思います。
ピチピチのスパッツに、スポーツ眼鏡をして、ハンチング?帽子をかぶっているラテンのノリの関西人といった印象でしょうか。
どこからみて怪しい笑おじさんなのですが、今ではモナコに邸宅を構える立派な成功者さんです。
デュ-クさんの本名は、「更家拓也」さんといいます。祖先は奈良・和歌山の出で、南北朝時代には天皇家を守護する皇氏だったといいます。デュ-クさんはそこから13代目の頭首にあたるのです。
モデル仲間の友人から、”じゃあおまえはデュ-ク(公爵)やな”といわれてから、このネーミングをつけたのです。
デュ-クさんの本『いいことがいっぱい起こる歩き方』は、比較的古い本(10年前)ですが、読むと古くささをまったく感じさせない、デュ-クさんの歩くことに対する思いがいっぱい詰まった面白い本です。
中心のある歩き方をしているか
デュ-クさんほど、他人の歩き方に目がいってしまう人はいないのではないでしょうか。というのもデュ-クさんはおそらく世界で唯一のウォーキングドクターの肩書を持っているのですから。
デュ-クさんによれば、スポーツ選手の試合中の歩き方次第で、その人の緊張具合や調子の良さ、はては勝敗の帰趨まで判断できるといいます。
歩くときは全身の骨や筋肉を使うものだし、骨や筋肉は神経ともつながっているから、その人の精神状態や感情、性格が歩く姿に表れるのは、当然といえば当然だ。
そこでデュ-クさん、読者にこう問いかけます。
では人生に対してポジティブな人の歩き方はどうなっているのか。
その答えは、「中心のある」歩き方をしているです。
いってみれば、コマのように軸を中心に回転しているような歩き方です。では中心のある歩き方とは、具体的にはどのような歩き方なのでしょうか。
それは、仙骨をたてる歩き方ということになります。
仙骨というのは、以前にも腰痛の記事ででてきましたが、尾骨の上にあるお尻とウエストの間にある骨のことです。
上の画像でいえば、真ん中にあるぽつぽつと2列縦に穴が開いてある骨のことです。まさに体の中心、かなめにある骨といってよいでしょう。
それでは実際に仙骨をたてるにはどうしたらよいのでしょうか。
デュ-クさんによれば、以下の手順でできるようになります。ただし、この本で描かれている手順とは少し違いますのでご注意ください。
- まず、両かかとをつけならが、つま先を少しひらいてまっすぐに立ちます。
- 中腰になって、両膝同士をくっつけながら両ひざにそれぞれの手を当てる。
- 股関節を緩めるように、両手で両膝を大きく外側に押し開く。
- ひざを開いたままで手を放し、へそを持ち上げて前に突き出すイメージで上半身をゆっくり起こす。
- 上半身はまっすぐになることを心がけて、かかととお尻が一直線になったところで3秒キープ。
- ①~⑤を3回繰り返した後、ひざをゆっくりと伸ばして立ちます。
④の段階では、お尻を突き出さないように注意してください。
また最後⑥の段階では、背骨がスッと伸びて、骨盤が立っていることを意識してください。
動画もあるとわかりやすいので、マッスルウオッチングのトレーナーさんの紹介動画を置いておきます。
これで仙骨をたてて立っていることになります。
もし仙骨が立っていない状態で横からポンと突かれると、ほとんどの人がよろけてしまうと思います。
仙骨がたっていて地面からしっかりと垂直に立てている人は、小突かれてもビクともしないものだといいます。
日本人と欧米人の歩き方の違い
日本人と欧米人では歩き方が歴史的に違っていました。
欧米人は石畳の道を歩くので、かかとから落として足でけりだすという歩行をしてきました。
デュ-クさんは、このような地面に対して垂直に歩くような歩き方を、「垂直アライメント」の歩行と呼んでいます。
アライメントというのは”並べる”という意味があります。
一方、日本人は歴史的にずっとぬかるんだ土の上を、わらじを履いて歩いてきたわけです。わらじを履いて歩いてみるとわかりますが、かかとを浮かせ気味にしてつま先で着地したほうが歩きやすいのです。
日本人が腕を振って歩くようになったのは、明治以降といわれています。これは軍事教練の影響が大きいと思いますが、その前は、日本人は腕を振らないで前かがみで歩いていたのです。
前かがみで前に倒れないように歩こうとすると、自然とすり足で歩くようになります。
このようにすり足で地面と平行に歩く歩き方を、デュ-クさんは「平行アライメント」と呼びます。
平行アライメントは垂直アライメントよりも歩幅は小さくなりますし、腹筋や脚力もあまり使わない省エネな歩き方なので、現代日本人の食生活だと太りやすい歩き方だといえます。
現代日本人は腕は振るようになりましたが、足は依然としてすり足気味なので、中途半端な歩き方になっているのです。
ただし、デュ-クズォークでは、腕は振らないで歩くことになっています。どうしてでしょうか。
良く腕を振って歩きましょうといわれますが、腕のふり幅と足のふり幅は違うので、タイミングがずれてしまうのです。
簡単に言えば、腕のほうが速く、足のほうが遅いのです。
なので腕のほうを強く振れば、足は腕のタイミングに合わせて歩かなくてはいけなくなります。
また、腕を体の中心線から前にだして歩くと、上半身はどうしても前かがみになります。
そのため胸を張るようにとも言われるのですが、この歩き方はカロリー消費のための歩き方で、普段の美しい歩き方とはまた目的が別の歩き方なのです。
デュ-クズォークでは、手はあまり振らず、ひじも曲げず、こぶしも握らずに腕を後ろに引くだけです。
ぼくはこれを「背中を使って歩く」という言い方をしています。
腕を後ろにひくことで、背中の筋肉に刺激が入るからです。
ただし、腕を引いたときに肩が動くとだらしなく見えますので、注意してください。
「私は女優」歩きで輝く自分に
きれいに歩こうというと、普通の人はいわゆるモデルさんの歩き方を想像されることが多いと思います。
モデル歩きはキャットウオークと呼ばれます。デュ-クさんはモデルさんの指導をしたこともあるそうですが、モデル歩きについてはあまり評価されていません。
というのも、腰をくゆらせるようなモデル歩きは、服を良く見せる歩き方であって、その人のそのものを美しく見せる歩き方ではないからです。
それなら、自分を美しく見せる歩き方の大原則とは一体何でしょうか。
それは一本の線の上をまっすぐ歩くということにつきる。
まっすぐに歩くというと、みなさん下を向いて歩こうとするのですが、これは間違いだといいます。
そうなると猫背になるし、バランスがくるってしまいます。
その代わり、へそから一本の線がまっすぐ出ているとイメージしながら、顔は正面を向けたまま、スッスッと足を前にだしていけばいいといいます。
最近の若い人でも歩き姿を見てると、足が一本の線の上を歩いているのではなく、二本の平行した線の上を歩いているように見えます。
これは安定した歩き方かもしれませんが、前から見ると美しくなく、足も太くなってしまいます。
デュ-クさんは意外に思われるかもしれませんが、トレーニング中は音楽を流さないそうです。その代わり生徒さんたちに声がけをします。
「ええで、ええで」
「きれいやで」「美しいで」
デュ-クさんは音楽の代わりに、言葉を使ってリズムを作っていくのです。
「きれいやで」、「美しいで」と声をかけていると、不思議と皆さん本当にどんどんきれいな歩き方になっていくといいます。
デュ-クさんが歩き出す前に、生徒さんにかけるとっておきの言葉があるといいます。それが、
私は女優
とつぶやかせることです。
最初は皆さん恥ずかしがっていますが、「私は女優」とつぶやいて歩きだすと、皆さん雰囲気がパッと変わって、どんどん輝きだすといいます。
要は、イメージをつくるということだ。歩く時のイメージをあたまに思い描くことは、実際に歩くことと同じくらい大切だ。
そうやって歩いていると、後ろに五人は男たちがついてくるといいます笑。
歩き方で性格がわかる
自分は女優だとイメージすることで、本当に自分が女優のように周りからも見えてくるという話をしました。
今度は逆に普段の歩き方から、その人の生活習慣や性格などが浮かび上がってくるといいます。
例えば、競輪場や競馬場でみかけるギャンブル好きな男性には、共通した歩き方の特徴があります。
ガニ股で、ひざから下だけを外に大きく振り出して歩く人が多いのです。その際、腰は落ちてしまっていて、背中は丸まってしまっています。
また自分に自信のない人は、どうしても歩幅が狭くなりがちです。足があがらずに、ペタペタとサンダルを履いているような歩き方になります。
だからこそ、普段の歩き方にもっと意識をもっていってほしいといいます。
つまり、歩き方を変えることによって、格好よく見せることも、好印象を与えることも、強そうに見せることも、控えめに見せることもできるのだ。
名は体を表すといいますが、デュ-クさんによれば歩は体を表すということなのです。
モノを美しく動かす「返し」の技法
デュ-クさんによれば、歩行だけではなく、日常の”しぐさ”にも、もうちょっと気を使ってほしいといいます。
ちょっとしたしぐさに変化をつけるだけで、グッとその人が魅力的に見えてくるのです。
それが「返し」の動きです。
例えば、キッチンで誰かに調味料をとってほしいと頼まれた時に、貴方ならどのような渡し方をしますか。
そういう時に、直線的に腕を伸ばして調味料をとり、そのまま相手にこれまた直線的にズバッと手渡してしまうのは、はためにも美しくありません。
直線的にある点からある点まで動かすのではなく、そこに”返し”という動きを加えてあげることで、より美しい所作になるのです。
そのためには、手に取ったものをいったん自分に引き寄せ、それから右なり左なり差し出すようにすればいいわけです。
自分にいったんモノを引き寄せるというワンクッションをはさむんでやることで、動作がやわらかくカーブを描くようになり、所作が格段に美しくなるわけです。
また直線的な動きは、筋肉に負担をかけるために、肩こりの原因にもなるといいます。
日頃から自分のほうに一旦引き寄せるという癖をつけることで、体調にも好影響を与えてくれるのです。
最後に、デュ-クさん著書はたくさんありますが、この本はデュ-クさんの思想を語ったエッセイになっています。
もう少し実践的で新しい本も紹介しておきますので、そちらも参考にしてください。